2021年4月から大阪大学大学院情報科学研究科モバイルコンピューティング講座は山口研究室になりました。詳しくは山口研 WEBサイトをご確認ください.

研究テーマ紹介|スマートホーム・BEMS/HEMS
BEMSやHEMS・スマートホーム・スマートビルディングに関する研究を行っています.
BLE電波測位に基づく空調機器の自動位置検

オフィスビルや商業施設などを対象に,スマートビル化が推し進められており, 特に,電気代削減のための使用電力量のピークシフトなど,暖房,換気,空等システム(HVACシステム)をネットワークに接続し自動制御する技術の実現が期待されています. その一方で,こうした制御の基盤として,制御対象となる機器のレイアウト上の設置位置とネットワーク上のアドレスの対応付けが必要です. 一般にネットワーク上のアドレスは起動時に自動的に設定されるため,設置位置と紐付けるためには,それぞれの機器を1台ずつ稼働させるといった手動の作業が必要となり設定のオーバーヘッドが非常に大きく, また,追加設置時やレイアウト変更時など,ネットワークアドレスに変更が発生した場合,再度同様の作業が必要となります.そこで,我々は,HVACシステムにBluetooth Low Energy(BLE)を組み込み, BLEがお互いに発信し合う電波強度をもとに各々の機器の位置関係を計測することによって,機器同士の位置関係を推定し自動的にマッピングする技術開発を進めています.
人の行動とモノの位置を利用したモノの属性推定

スマートホームやスマートオフィスなどでは,人の位置や行動,コミュニケーションに加えて,その環境の設備や空間内のモノの位置や属性を理解し,人間の社会活動や生活を支援することが重要となります.例えば,家庭において家電や家具,食器などの位置や移動が情報システム側で理解できれば,それをもとにした行動認識と健康生活支援といったユビキタスサービスが実現できます.近年,RFIDシステムの発展により,大量のRFIDタグを活用することで,こうしたモノの位置や移動を管理するサービスの実現がされつつあります.しかし,このようなシステムを利用し,モノの位置や属性をスマートスペースのようなアンビエント空間サービスに提供するためにはRFIDタグのタグIDとそれが貼付されたモノの対応を人がシステム側に入力する必要があります.しかし,大量のモノを対象としたシステムにおいてそれらを逐一登録することはヒューマンエラーやコストの観点から望ましくありません.そこで本研究では,人の行動によって引き起こされるRFIDシステムの電波変動を利用し,モノの位置や移動パターン,モノの使用情報などを取得することで,空間内においてRFIDタグが貼付されたモノが何であるかを自動で推定する技術を開発しています.
家庭内の総消費電力時系列データからの家電利用推定

センシング技術の目覚ましい発展を背景に,家庭内にセンサを設置し居住者の家庭内行動を自動的に認識することで,日常生活に起因する様々な問題の予兆検知や生活改善アドバイスを与えるようなサービスが期待されています. しかし,家庭内を対象とする場合,プライバシの配慮が必要となるため,例えばカメラを用いた行動推定手法などは現実的ではありません. また,複数の安価な人感センサなどを宅内に設置する手法も多いものの,実サービスにおいては複数のセンサの設置や管理にかかる人的コストが無視できません. そこで本研究では,スマートメータなどから定期的に取得可能な総消費電力である''主幹電力''の時系列データのみを用いて家電利用の推定を行います.家庭内行動の多くが家電の利用を伴うことから,家電利用状況が推定できれば,低コストかつ非侵襲な家庭内行動推定が実現できます. 提案手法では主幹電力を事前に準備した家電の電力使用パターンに基づいて分析することにより,低粒度の主幹電力を用いた使用家電の種別推定を行います.その後,家電の動作状況と行動内容を表した論理式を用いたマルコフロジックネットワークによって行動内容の推定を行います.
在不在と家電利用データの集約による家庭内行動認識

本研究では,スマートホームにおける日常行動推定及び健康促進レコメンド生成手法というテーマで 研究を行なっています. 元気で健康的な「スーパー高齢者」が増えることで更なるQoLの向上や地域の活性化を目的とし, 最終的に近年の高齢化や過疎化問題の解決を目指します.
行動推定に関して,ポータブルセンサを用いて各時間における居住者の屋内位置と家電利用の情報を取得し 「寝室にいるなら寝ている」「電子レンジを使用するなら料理をしている」といった ルールベースの推定手法を提案します. また,本手法ではフィードバック機構を備えており, 居住者の負担となる導入時の教師データ収集コストを削減する工夫をしています.
スマートホームでのセンシング

人々の行動を把握する各種センサーとそれらを繋ぐネットワーク技術を家庭内に導入することで,より豊かで快適な暮らしを可能にするスマートホームは,近年の環境問題や省エネルギーへの関心を背景に普及しつつある.省エネルギーは特に喫緊の課題であるため,家庭内の家電の制御を行うことでエネルギーを管理するHEMS(Home Energy Management System)とスマートグリッドの連携によるデマンドレスポンスなど,様々な取組みが為されている.一方,豊かで充実した生活を送るためには,省エネルギーばかりでなく健康や家族間のコミュニケーションなどについての生活改善も必要であり,スマートホームにはエネルギー管理と生活改善支援の両方の機能が望まれる.
研究グループでは,居住者の家庭における生活改善アドバイス生成システムの設計開発を行っている.このシステムでは,食事や睡眠といった日常的な行動を様々なセンサーによって検出し,電気料金や健康指標などを改善可能なアドバイスを自動で生成,提示する.例えば電気料金の高い時間帯に実施している,家電利用を伴う行動(掃除など)は安い時間帯に実施するよう提示され,運動不足を検出した場合に適切な運動時間と消費カロリーが提示される.家庭内行動の検出にはプライバシー侵害への抵抗感が少なく,赤外線センサー等で安価に実現可能な人検知センサーを用いることが望ましいが,個別の住居に対応するためのキャリブレーション操作やセンサー位置登録など設置時に複雑な操作を求められることが多い.このような導入時負担は特に高齢者家庭などへのシステム普及の障壁となるため,可能な限り安価で設置が簡易なシステム設計が望まれる.
本研究では,生活行動アドバイス導出に必要となる家庭内行動を把握するため,配置が容易なポータブル型人感センサーおよび電力消費モニターを複数利用した家庭内位置推定システムを設計開発する.提案手法では特定の位置や家電に関連付けされていない人感センサーならびに電力消費モニターを対象住居に複数設置するだけで,各人感センサーが居住者の滞在あるいは移動のいずれを主として検知しているかを,対象住居での数日程度の検知データから自動で推定する.また,消費電力から利用家電を推定し,家電の利用行動と前述の滞在場所を関連づけることで,滞在場所の属性(リビング,キッチン,寝室等)を推定する.これにより,センサー位置登録や家電登録を要することなく対象住居での宅内行動を正しく把握するシステムを実現することを目指す.
生活改善アドバイスシステム

「掃除機の稼働モードを弱にすると1日あたり50円節約できます」,「通勤手段を自家用車から自転車に変えると消費カロリーが200kcal増加し,健康的です」など,各家庭の居住者の生活の“質”を向上させるための行動改善をアドバイスするシステムの研究と実装に取り組んでいる.アドバイスの導出にあたっては,クラウドソーシングを活用した大規模なアンケート調査から“生活を充実させるための知恵やノウハウ” を抽出し,それに基づく生活改善指標(金銭,健康,快適など)と改善ルール(節電,交通手段の改善,規則的な生活など)を設計している.さらに,センシングデータとMarkov Logic Networkによる行動認識に基づき,個々の居住者に合わせた生活改善アドバイスを提供するシステムの実現を目指している.
発表
- 中村 笙子,廣森 聡仁,山口 弘純,東野 輝夫,山口 容平,下田 吉之 : " スマートハウス内センシングを活用した生活行動推薦システム " , マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シンポジウム , 2014年7月
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- 中村 笙子,志垣 沙衣子,廣森 聡仁,山口 弘純,東野 輝夫 : " 大衆の生活ノウハウの定量化とモデル化による生活改善アドバイス生成システム " , 電子情報通信学会ASN研究会 , 2015年1月 .
- 中村 笙子 : " マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シンポジウム 優秀プレゼンテーション賞 " , 情報処理学会 , 2014年7月 .