研究テーマ紹介|これまでの研究

混雑推定

本研究グループでは,参加型センシングにより,屋内空間の混雑状況をリアルタイムに認識する手法を提案する.我々はこれまでに,スマートフォンの加速度センサおよびマイクを用いて端末周辺の混雑状況を判定する手法を研究してきた.一方,多数の端末からの情報提供を前提とする参加型センシングの利点を活かすためには,特性の異なるセンサや複数の端末から得られる情報を効果的に統合する仕組みが求められる.そこで我々は,加速度・音声情報をそれぞれの特性に応じて適切に組み合わせるデータ融合アルゴリズムを設計するとともに,各端末から得られる情報に対して信頼度を付与することで,端末保持方法や歩行動作の個人差の影響を軽減する手法を検討する.


論文・発表・表彰など

  1. 西村 友洋,樋口 雄大,山口 弘純,東野 輝夫 : " スマートフォンを活用した屋内環境における混雑センシング " , 情報処理学会論文誌 55(12) , 2014年12月 . PDF
  2. Tomohiro Nishimura,Takamasa Higuchi,Hirozumi Yamaguchi,and Teruo Higashino : " Detecting Smoothness of Pedestrian Flows by Participatory Sensing with Mobile Phones " , The 18th International Symposium on Wearable Computing (ISWC '14) , 2014年9月 . PDF
  3. 西村 友洋,樋口 雄大,山口 弘純,東野 輝夫 : " スマートフォンを活用した屋内混雑センシングの実装と評価 " , 情報処理学会第160回DPS研究会 , 2014年7月 . PDF

画像人数推定

近年,都市街区などにおける人々の存在や行動を把握し,混雑予想や大規模イベント推定に活用する事例や研究がみられるようになってきている.イベント会場や駅前,あるいは道路などの特定のスポット空間における群衆の存在を把握することができれば,混雑の解消や集客状況の把握など様々な応用が期待される.

本研究では,スマートフォンを有する協力者がビルの2階など比較的高所から群衆を撮影した俯瞰画像が提供されるものとし,その画像からの群衆人数推定を行う.提案手法では,群衆が移動していることを仮定し,短い時間間隔で撮影された2つの画像の差分を取ることで群衆が存在する領域を抽出する.1人あたりの占有面積は,撮影高度や撮影角,画像内での位置などにより異なるため,本研究では被写体サイズ推定モデルを構築し,高精度な群衆人数推定を実現させる.本研究では被写体サイズ推定モデルでは,スマートフォンの気圧センサなどから得られる撮影者の高度と加速度センサから得られる傾度の情報を入力とし,画像内の任意の位置における被写体の占有面積を推定する.

快適度センシング

近年ではBEMS(ビルエネルギー管理システム)が導入され,省電力と快適な空調環境の実現を目指しているが,このようなシステムは設備型センサ に依存し,設置位置や設置数に大きく影響を受けるため,オフィスビルの居住者や商業施設の来訪者の「快適性」を真に表していない場合が多い.さらに人々の集団が発する熱などにより歩行者の周辺温度は上昇する可能性があり,体感的快適性の実現は困難となる.本研究では人々の活動による放熱を人密度から推定し,体感的な快適度を表すPMVに反映する手法を提案する. モバイルセンシングによる群衆推定技術を前提とし,推定した群衆情報と施設に設置されたセンサーからの温度情報をもとに,なるべく正しいPMVを測定することを目的とする.

スマートホームでのセンシング

人々の行動を把握する各種センサーとそれらを繋ぐネットワーク技術を家庭内に導入することで,より豊かで快適な暮らしを可能にするスマートホームは,近年の環境問題や省エネルギーへの関心を背景に普及しつつある.省エネルギーは特に喫緊の課題であるため,家庭内の家電の制御を行うことでエネルギーを管理するHEMS(Home Energy Management System)とスマートグリッドの連携によるデマンドレスポンスなど,様々な取組みが為されている.一方,豊かで充実した生活を送るためには,省エネルギーばかりでなく健康や家族間のコミュニケーションなどについての生活改善も必要であり,スマートホームにはエネルギー管理と生活改善支援の両方の機能が望まれる.

研究グループでは,居住者の家庭における生活改善アドバイス生成システムの設計開発を行っている.このシステムでは,食事や睡眠といった日常的な行動を様々なセンサーによって検出し,電気料金や健康指標などを改善可能なアドバイスを自動で生成,提示する.例えば電気料金の高い時間帯に実施している,家電利用を伴う行動(掃除など)は安い時間帯に実施するよう提示され,運動不足を検出した場合に適切な運動時間と消費カロリーが提示される.家庭内行動の検出にはプライバシー侵害への抵抗感が少なく,赤外線センサー等で安価に実現可能な人検知センサーを用いることが望ましいが,個別の住居に対応するためのキャリブレーション操作やセンサー位置登録など設置時に複雑な操作を求められることが多い.このような導入時負担は特に高齢者家庭などへのシステム普及の障壁となるため,可能な限り安価で設置が簡易なシステム設計が望まれる.

本研究では,生活行動アドバイス導出に必要となる家庭内行動を把握するため,配置が容易なポータブル型人感センサーおよび電力消費モニターを複数利用した家庭内位置推定システムを設計開発する.提案手法では特定の位置や家電に関連付けされていない人感センサーならびに電力消費モニターを対象住居に複数設置するだけで,各人感センサーが居住者の滞在あるいは移動のいずれを主として検知しているかを,対象住居での数日程度の検知データから自動で推定する.また,消費電力から利用家電を推定し,家電の利用行動と前述の滞在場所を関連づけることで,滞在場所の属性(リビング,キッチン,寝室等)を推定する.これにより,センサー位置登録や家電登録を要することなく対象住居での宅内行動を正しく把握するシステムを実現することを目指す.

生活改善アドバイスシステム

「掃除機の稼働モードを弱にすると1日あたり50円節約できます」,「通勤手段を自家用車から自転車に変えると消費カロリーが200kcal増加し,健康的です」など,各家庭の居住者の生活の“質”を向上させるための行動改善をアドバイスするシステムの研究と実装に取り組んでいる.アドバイスの導出にあたっては,クラウドソーシングを活用した大規模なアンケート調査から“生活を充実させるための知恵やノウハウ” を抽出し,それに基づく生活改善指標(金銭,健康,快適など)と改善ルール(節電,交通手段の改善,規則的な生活など)を設計している.さらに,センシングデータとMarkov Logic Networkによる行動認識に基づき,個々の居住者に合わせた生活改善アドバイスを提供するシステムの実現を目指している.


発表

  1. 中村 笙子,廣森 聡仁,山口 弘純,東野 輝夫,山口 容平,下田 吉之 : " スマートハウス内センシングを活用した生活行動推薦システム " , マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シンポジウム , 2014年7月 . PDF
  2. 中村 笙子,志垣 沙衣子,廣森 聡仁,山口 弘純,東野 輝夫 : " 大衆の生活ノウハウの定量化とモデル化による生活改善アドバイス生成システム " , 電子情報通信学会ASN研究会 , 2015年1月 . PDF
  3. 中村 笙子 : " マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シンポジウム 優秀プレゼンテーション賞 " , 情報処理学会 , 2014年7月 .

路面推定

歩行者ナビゲーションにおいて利用者に提示される経路は,段差や傾斜が存在する場合,高齢者や車椅子利用者にとっては通行が負担・困難となりうるように,全ての人にとって快適に通行できる経路ではない.このため,高齢者や車椅子利用者などの身体能力の高くない利用者にとって利便性の高い歩行者ナビゲーションサービスの実現のためには,段差や傾斜,路面の砂利等の存在といった通行路状況は非常に有用な情報である.

本研究では,靴に慣性センサを搭載することによって通行路状況を把握する手法を提案する.提案手法では,路面の傾斜,安定性と通路の凹凸の有無の推定を行う.このような通路の状況を把握することにより,このような通路の通行にリスクのある人々に対しても安全・快適な経路を提案することができる.提案手法では加速度計と角速度計からなる慣性センサを靴に搭載することにより,足の動きを把握する.靴底が路面に完全に接している時間において,路面の状況がよく足に反映されていると考えられる.この時間(接地時間)において足はほとんど動かず,逆に接地時間以外では足は歩行動作に伴って動くことから,接地時間はセンサで観測する加速度と角速度から認識可能である.次に,接地時間において加速度計の各軸にかかる重力の分力に基づき路面の傾斜を推定する.さらに,複数歩における路面の傾斜についての分散を算出し,これを用いて路面の凹凸を認識する.また,接地時間内における加速度の分散を用いて路面の安定性を推定する.


論文・発表・表彰など

  1. Takumi Satoh,Akihito Hiromori,Hirozumi Yamaguchi,Teruo Higashino : " A Novel Estimation Method of Road Condition for Pedestrian Navigation " , International Workshop on the Impact of Human Mobility in Pervasive Systems and Applications (PerMoby '15) , 2015年3月 .
  2. 佐藤 匠,廣森 聡仁,山口 弘純,東野 輝夫 : " スマートフォンと靴センサを活用した災害時通行路の状況推定 " , マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シンポジウム , 2014年7月 . PDF
  3. 佐藤 匠 : " マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2014)シンポジウム ヤングリサーチャー賞 " , 情報処理学会 , 2014年7月 .

ウェアラブルセンサを用いた生体温熱モデルに基づく運動中の深部体温推定

身体深部の体温を把握することは,暑熱環境や運動による人体への負荷を評価するうえで重要である.例えば,深部体温の異常な上昇を早期にとらえて 熱中症を予防したり,適度に深部体温が上昇するように運動負荷を調整することで,運動の質を向上できる.しかし,深部体温の測定には直腸温度や鼓 膜温度を計測する必要があるため,活動中の計測は困難である.

そこで本研究では,ウェアラブルセンサを用いて個人差を考慮した活動中の深部体温推定手法を提案する.提案手法では人体の熱産生,熱移動を物理的 に計算可能な生体温熱モデルに基づき深部体温の変化を推定する.生体温熱モデルには個人差や日によって異なる体調を表す個人差パラメータが存在し ており,高精度な予測を実現するにはこれらのパラメータを適切に定める必要がある.

提案手法では,ユーザの身体情報や気温や湿度などの環境情報,および運動負荷をウェアラブルセンサや環境センサにより取得し,生体温熱モデルの入 力とすることでシミュレーションを行い,単位時間ごとの体表温度および深部体温の推定値を得る.少ないユーザ負担で推定精度を向上させるため,個 人差パラメータの組を網羅的に与えることで得られる体表温度の推定値と,ウェアラブルセンサで得られる体表温度の実測値を比較し,最も誤差の小さ い個人差パラメータ組を決定する.このとき,深部体温の推定値は決定された個人差パラメータ組でのシミュレーション結果として得られる.


論文・発表・表彰など

  1. 濱谷 尚志,内山 彰,東野 輝夫 : " ウェアラブルセンサを用いた深部体温推定に関する一検討 " , 情報処理学会第72回MBL研究会 , 2014年8月 . PDF
  2. 濱谷 尚志,内山 彰,東野 輝夫 : " ウェアラブルセンサを用いた生体温熱モデルに基づく深部体温推定法の提案 " , 情報処理学会第73回MBL研究会 , 2014年11月 . PDF
  3. 濱谷 尚志,内山彰,東野輝夫 : " 情報処理学会 第73回MBL研究会優秀発表賞 " , 情報処理学会 , 2014年11月 .

雪道速度モデル

冬季に多量の積雪がみられる積雪都市においては,降積雪が交通流に大きな影響を及ぼしている.路面上に雪が堆積することにより,自動車が道路を走行しにくくなるだけでなく,堆積した雪が道路脇に積み上げられることで道路の幅員が狭くなるため,その道路の交通容量は大きく低下する.降積雪が道路交通に与える影響を把握することは,積雪都市における交通計画管理上重要な課題である.

本研究では,世界有数の積雪都市である札幌市において収集されている交通データの1つであるブローブカーデータから得られる道路交通情報,及び降雪量や積雪量などの気象データを収集し,これらのデータを重回帰分析によって分析することで,気象条件の変化に伴う道路交通速度の変動を推定するモデル式を作成する手法を提案している.このモデル式を路線ごとに作成し分析することにより,気象条件の変化が雪道の交通速度の低下に与える影響について評価を行う.

札幌市内の実道路上のプローブカーデータを用いて,複数の路線に対し提案手法によるモデル構築を行った結果,雪道の交通速度の低下は気象データによってある程度説明可能であることを示した.また,路線ごとの速度低下要因の違いについても考察を行っている.

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